本来は個性である出っ歯
出っ歯と言う言葉はいわゆる俗称と言うもので、本来は上顎前突症(じょうがくぜんとつしょう)の症例の一つとして扱われています。この「出っ歯」ですが、歯が出ていることは病気でも異常でもありません。顔の作りは個人差があり、出っ歯はその一つとして扱われます。
どういう状態が出っ歯?
上顎前突には、歯のみが突出している歯性のものと、上あごの骨そのものが前突している骨格性のものがあります。歯性によるものの場合は、上の前歯が傾斜しながら突出しているため、唇が自然に閉じられなかったり、口を閉じたときに前歯が口から出てしまったりします。無理に口を閉じると、下あごに梅干しのようなシワができたり、下唇が上の前歯にあたってこすれたりします。
出っ歯と言うと上の歯が前にせり出している状態で「反っ歯(そっぱ)」とも呼ばれます。歯の状態の異常によって噛み合わせや顔の形が変形している状態は顎変形症(がくへんけいしょう)と呼ばれ、症状のうちの一つに上顎前突症があります。多少歯が前に出ている程度で生活に支障をきたしていない場合は異常とは見られません。
しかし、審美性や見た目などから出っ歯であることを気にして治療を考える人は数多くいます。個人によって出っ歯への印象や受け取り方が違うため、線引きが難しい症状でもあります。
しかし、審美性や見た目などから出っ歯であることを気にして治療を考える人は数多くいます。個人によって出っ歯への印象や受け取り方が違うため、線引きが難しい症状でもあります。
出っ歯の治療方法
via pixabay.com
上の前歯が下の前歯と比べて前方に距離がある場合を「オーバージェット」と呼び、上顎前突はこの距離で測れるものでもありません。人によっては目立つ出っ歯とそうでない出っ歯があります。しかし、前歯は目立つ部分であるため悩みとして抱える人も少なくありません。どうしても気に病むことであれば治療や矯正を検討するべきでしょう。
治療方法には矯正器具を使ったものが挙げられます。有名なところでプラケットやマウスピースを使用したものがあります。中には歯列矯正だけでは治療が難しく、抜歯や歯を削る治療法も考えられます。そこで今回は新しい出っ歯の矯正法としてインプラント矯正を紹介します。
治療方法には矯正器具を使ったものが挙げられます。有名なところでプラケットやマウスピースを使用したものがあります。中には歯列矯正だけでは治療が難しく、抜歯や歯を削る治療法も考えられます。そこで今回は新しい出っ歯の矯正法としてインプラント矯正を紹介します。
新しい出っ歯の治療方法「インプラント矯正」
インプラントと言うと、新しい歯を埋め込む治療法を思い浮かべるかと思います。インプラント矯正はそのインプラントの方法を歯の矯正に応用した治療法です。通常のインプラントと同様にあごの骨に小さなネジやプレートを埋め込むことで、歯に大きな力をかけて矯正する治療法です。
従来の矯正との違い
これまでの矯正法は、歯と歯に器具を繋ぎ合わせて少しずつ歯を動かしていく治療法でした。インプラント矯正は埋め込んだインプラントの力を使って歯を動かしていく治療法です。想定の位置に歯を動かすことができると言われ、より精密で効率的な治療結果が出せると言われています。
インプラント矯正の種類
インプラント矯正では矯正用の特別なインプラントを使用することになり、用途に応じていくつかの種類を遣うことになります。インプラント治療のものとは別の器具を使うことになりますが、通常のインプラント治療に用いるものより比較的低価格であることも特徴です。
K-1システム
ネジ式のインプラントで主に前歯の矯正に使われます。この方法を用いることでガミースマイルの改善にも役立ちます。
MIA(マイクロインプラント)
矯正の移動距離が短い場合に使われ、極小のアンカースクリューを埋め込む方法です。矯正治療の幅が大幅に広がり、小型のため手術が短時間で済むというメリットがあります。K-1システムと同様の効果が見られると言われています。
SMAP(スマップ)
プレートタイプのインプラントで、歯の全体が動くほど強い力が作用します。より強い力をかけることで前歯を下げることもできれば、奥に引っ込めたりすることが可能になります。
インプラント矯正のメリット
矯正装置を外すまでの治療期間(動的治療期間)は、1年半~2年半くらいの患者様が多いそうです。治療期間は、歯並びの状態や抜歯矯正・非抜歯矯正によっても変わるので、個人差があります。
最大のメリットは「短期間での矯正」です。歯の矯正は従来の方法だと通常1~2年はかかると言われていますが、インプラント矯正だと半年程度と大幅な期間短縮が見込めるのです。
ガミースマイルの治療も兼ねる
ガミースマイルとは、笑ったときに上唇が上がり、歯ぐきの大部分が見えてしまう状態です。容姿の問題だけでなく、笑顔に自身がなくなるといったメンタル面への支障もあり、お悩みの方も多い症状です。
インプラント矯正には歯茎の外科手術を必要とする「ガミースマイル」の治療にも効果的と言われています。インプラント矯正は歯列全体を引き上げる矯正法でもあり、最初にインプラントを埋め込むことで歯列矯正と同時に行われることになるのです。そのためガミースマイル治療のための外科手術を行う必要がなくなるのです。
抜歯や歯を削る必要が無い
歯列状態によっては歯を削ったり抜歯を行わないと矯正が難しいケースもありました。インプラント矯正は埋め込んだインプラントが支点となって歯を動かすことから引っ張るための健康な歯を抜くという必要がなくなります。これまでは矯正する歯にかかる力を支えていた歯がインプラントに代わるため、健康な歯への影響と言うものも無くなります。
アンカーロスが起こりにくい
アンカーロスとは、矯正のアンカーとして使用していた歯が、本来動かす予定だった歯に引っ張られて動いてしまうことです。
矯正にアンカーロスは付き物なので、矯正を行う際はあらかじめアンカーロスも計算に入れて治療計画を立てますが、予想以上にアンカーロスが大きくなってし まった場合は歯を並べるスペースが足りなくなってしまい、よい矯正結果が得られなかったり、期間が長引いてしまったりすることもあります。
従来の治療法では隣り合う歯がお互いに力をかけることで矯正を行ってきました。この場合だと、動かしたくない歯にも力がかかってしまい、結果的に必要ない歯を動かしてしまうこともあり得ます。これを「アンカーロス」と呼びます。
インプラント矯正は動かしたい歯だけをインプラントとの間で力をかけて修正するためアンカーロスは起こりにくいというメリットがあります。そのためインプラント矯正は従来の矯正よりも精度が高い矯正方法と言われています。
インプラント矯正は動かしたい歯だけをインプラントとの間で力をかけて修正するためアンカーロスは起こりにくいというメリットがあります。そのためインプラント矯正は従来の矯正よりも精度が高い矯正方法と言われています。
インプラント矯正のデメリット
良いことだらけのようなインプラント矯正ですが、デメリットも少なからず存在します。デメリットのほとんどは通常のインプラントと同じような物となります。
インプラントを埋め込む外科手術が必要
インプラントをあごの骨に埋め込むことになるので当然外科手術が必要となります。少なからず歯肉の切開などを必要とすることがあります。ただ、インプラント矯正も改良化が進んでいるため、外科手術をしなくて済むケース症例も報告されています。
感染症などの危険性
こちらもインプラント治療同様に治療後のケアを怠った場合には虫歯や歯周病、感染症などの危険性が高まります。治療後は口内を清潔な状態を保つことが必要です。
治療には年齢制限がある
骨が成長途中である未成年者はインプラントを行えないという制限があります。成長途中の骨に手を加えることで、顔が変形したり噛み合わせに異常が出ると考えられているからです。インプラント治療と同様の理由でインプラント矯正も未成年者は行えないことがあります。
可能性のあるインプラント矯正
インプラント矯正はまだ新しい治療法のためにまだまだ改良される可能性を秘めています。取り扱っている矯正歯科も少なく、インプラント矯正を検討している方は行っている医院を調べておくと良いでしょう。一般的に普及される頃にはさらに進化した最新のインプラント矯正が登場しているかもしれませんね。